稲美町の井澤本家
明石の隣の稲美町、田んぼや畑ばかりの土地に酒蔵があるなんて最近まで知らなかった。
ホームページの案内地図とグーグルマップを慎重に照らし合わせながら、畦道を少し太くした程度の道を辿ってようやく見えてくる「倭小槌」の幟。
格式は感じるものの田園地帯に点在する農家のほんの一軒。
そこが造り酒屋「井澤本家」。
て言うか、井澤さんち。
案内板も何もないから、「通りががりにたまたま見つけた」なんてことはまずあり得ない。
迎える狸じみたご主人は「ここまで来るんは、お主も好きもんよのぅ」という態度。
酒好き、その中でも普通でないものを求めている客だということが前提になっているような応対。
明らかに「好きもんのための酒」を造っているのだという自負を感じる。
入口土間の売店には「中田英寿さんお気に入りの酒」だと、純米吟醸酒に張り紙。
どうやら本人がわざわざここを訪ねて買いに来たらしい。
一応そういうことはアピールするのだな、と思ったが、ホームページにもそんなこと書いてなかった。
年に何人訪れるかわからないような直売場のお客さんにだけアピールする重要情報。
商売っ気があるんだかないんだかわからない。
自家栽培米の純米吟醸なんてのもあったけど、まずは基本の本醸造と純米生原酒を購入。
帰って封を解いたら1分ほどして生原酒の蓋が天井に飛んでいった。
何のインフォーメーションもなかったが発泡していたのだった。
飲んでみて驚き。
発泡感があるけどすごい旨味の強さ。
一発で惚れてしまった。
「まごころ」だなんて、どっかの道の駅とかで売られてそうなありがちな名前つけておいて、変態度高し。
本醸造も凄いコクの強さ。
いやしかし、なんでまた播磨という土地にはこんな知られざるオモロい酒造所ばかりあるんだろう。
明石の太陽酒造や西海酒造や茨木酒造のように、きっと地元でも余り知られていないんだろうけど、ホンマによそとは違う自分の酒を造ろうとする酒蔵が身近に幾つもあるというのは喜ばしい限りだ。